この間、ちょっと間違えば崖から真っ逆さまな舗装もされてない山道を一生懸命進んで、
やっとたどり着いた場所で釣りをしたのですが、何も釣れませんでした。
フグ一匹も釣れないんです。こんな良さそうな漁港なのに・・・
ちょっと間違えば崖から真っ逆さまな怖い思いをしてたどり着いた場所で何も釣れない。
これもまた釣り・・・
そんな落ち込んでいるなかで、ふと目に付いたのが、浅瀬にいる黒い物体。
あ、ナマコ。
捕獲
以前も浅瀬にいるナマコを食べたことがあり、この際、魚じゃなくてもいいか、
と本来ヒラメやコチを釣るはずのバイブレーションでナマコをひっかけて釣り上げました。
真っ黒で長い30cmくらいの良型のナマコ。
この時はクロナマコだと思ってました。
うん、うまそうだ。今晩はナマコ酢で日本酒だな。
と、クーラーボックスに海水を入れて、活かして持ち帰りました。
調理
家に帰ってさっそく調理開始。
まずは、ナマコの頭と尻尾を切り、胴体を割きます。
割いた瞬間に体内から出てくる大量の水と砂。
こんなに内部留保があったのか。日本の企業と同じだな。
しかし、砂ならともかく、一緒に出てきた細い糸状の物が、
手やら包丁やらまな板やらにくっついて、非常に捌きにくい。なんじゃこりゃ。
あ、子供の時にテレビで見たな。たしか、これを体外に出して、
海底の有機物と一緒に砂や泥をくっつけて、丸ごと吸い込む器官だったっけ?
本当にくっつくな、これ。
名前コノワタだっけ?(違う)
あれ、でも過去にナマコをさばいた時にこんなのあったっけ?
まぁ、いいや。(ここで、このナマコは初見だということに気付くべきでした)
内臓を取った後、水で綺麗に洗い流し、炊飯釜に大量の塩と一緒にぶち込んで、
塩で徹底的にしごきます。たしかこうすればフニャフニャボディーが硬くなってくるはず。
しかし、塩で揉めど、揉めまくれど、一向に硬くならないフニャボディ。
まだそんな年じゃないでしょ?
縮むことは縮みましたが、今まで調理してきたナマコのように固くなりません。
う~~~ん?
まぁ、いいか。
大量の塩で4回ほど揉んでは洗い流しを繰り返し、厚さ3~4mmで切ると丁度15切れくらいになりました。
しかし、これだと色がないので、付け合わせにキュウリをスライスして添えます。
ナマコは英語でsea cucumber, キュウリは英語でcucumber。
陸と海のcucumber の合作です。
これにポン酢を掛けて七味を振って出来上がり。
おいしそう!
実食
さっそく一切れつまんで、口に入れてみる。
モグモグ・・・・
う~~~ん、以前食べたときのようなナマコのコリコリがない。
確かに硬いけど、噛めば、ぎゅーとなって噛み切れる。
コリコリの食感がまったくない。食感が一番近いのはイカの塩辛。
噛んだ時の食感がそっくり。
そして、一番不思議だったのが、たっぷりかけているはずのポン酢の味がしない。
塩で揉みすぎたのか、塩をたっぷりの水で薄めたような味はするが、ナマコ自体の味と
ポン酢の味がしない・・・・
おかしいな
このポン酢、買ったばかりだけど、酸味が飛んじゃってるのかな?
ためしにポン酢だけなめてみると、しっかりとポン酢の味がする。
調味料のなかでも味が濃いポン酢の味が、ナマコと一緒に食べるとしない・・・。
どういうこと?
それでもパクパク、きゅうりと一緒につまんで食べてみる。
7切れほど食べた後、舌に違和感を感じた。
ミント系のガムを噛んだ後みたいに、舌がスース―しだした。
???
これ・・・・なにかおかしい。
ここまで来て初めてネットで調べてみる。
「ナマコ 毒」 で検索クリック
!!!
一番最初に出てきた結果にびっくり。
まさに自分が調理して食べたやつだ!
名前はニセクロナマコ
昔、自分が食べていたトゲトゲのあるクロナマコとは別の種類だった・・・・
まさに「ニセ」!!!!
なんてこった・・・見た目真っ黒だから、あの黒いダイヤと言われるクロナマコだと
思って、ルアーでひっかけて獲ってきたのに・・・
ウィキペディアによると、ニセクロナマコとは
このナマコをぶつ切りにして潮だまりに放り込んで、その毒で魚を麻痺させて
捕まえる漁法もあるくらいの毒性!
ナマコ類全般にはサポニンという毒が含まれているらしいが、
大体は致死量ではないとのこと。
しかし、このニセクロナマコの学名にもなっている Holothuria leucospilota
(ホロツリア リュウコスピロタ)のホロツリアは、このナマコの体壁に含まれる
ホロツリンという強力な毒の名前から来ていて、
その強力な毒を以て上記の潮だまり殲滅漁法が成立するくらい。
思えば胴体を切った時に出てきたやたらと引っ付く白い糸みたいなの・・・
あれ、ナマコの珍味であるコノワタかとおもっていたら、あれは本物のクロナマコにはない、
キュビエ器官というものだったのか・・・・危うくあれを集めて干して炙って食べるところだった・・・
これを読んでサーーッと顔が青くなった(と思う)
7切れ食べた後から30分ほど経っているが、試しにトイレで吐いてみようとするが全く出る気配がない。
どうしよう・・・・そうだ、ネットだ!
ネットならすでにこのナマコを食べて生存してる猛者がいて対処法やこれから起こりうる症状などが
書いてあるはず!
必死にネットで「ニセクロナマコ 食べる」などと、すでに食べてしまった勇者の情報を
探すが、見つかったのは、バーナーで炙って食べてみたら、白い泡がでてきたから飲み込むのをやめた、というところまで。
完全に飲み込んだというところまで行った人がいない。
自分が尊敬している、あの未知の食材に挑戦している平坂寛さんですらも食べてない・・・
やばい、人生詰んだかな・・・
病院に行くしかないかな・・・
が、とりあえず、食あたりやフグ毒やアニサキスも食後数時間で何かしらの症状がでるものなので、
数時間、悶々としながら待ってみた。
食べたのは18時。
19時・・・・20時・・・・21時・・・・そろそろ来るか・・・・?
・・・・・23時
・・・あれ?
なにも来なかった。。。
ニセクロナマコを食べた結果
食べた直後の舌のスース―感もネットで検索しているときにとっくに消え去り、
腹痛、頭痛、吐き気、その他食中毒の典型的な症状は一切でなかった。
結果論および推測でしかないのだが、ひとえに「食べた量の少なさ」「塩で揉みまくった」
ことが良かったのだと思う。
「食べた量の少なさ」は毒物の摂取量が症状に直結するため、「食べたのが少なかったから助かった」
のはわかる。
そして、「塩で揉みまくった」に関しては今思えばこれも案外理屈が通っていたのかもしれないと思っている。
例えば、石川県の一部地域では、猛毒部位で有名なフグの卵巣の塩漬けにして売っている。
なんでも3年間塩漬けにすると毒素が抜けて食べれるようになるそう。
そして、実際友人からそのフグの卵巣の塩漬けをもらったことがあります。
感想は一言いうと、塩っ辛いだけでした。
フグの卵のウマミとか独特な香りとか一切なく、とにかく塩っ辛く、これ全部食べたら確実に高血圧で死ぬだろうなぁ、
と思える塩辛さでした。
おそらく塩分の浸透圧の関係で毒素が細胞から排出されているんではないでしょうか。
上記の、バーナーで炙って食べたら泡(おそらくサポニン?)がでてきたというレポートも、塩で揉みまくった結果、
サポニンが排出されたため、自分が食べたときは泡が出なかったのではないでしょうか。
そして、ホロツリンも同じ理由で、塩で揉みまくったために排出されてしまったのではないでしょうか。
ともかく、このナマコを食べたのが2020年の1月中旬。
3月末の現在、今のところ生きています。
ニセクロナマコの利用方法の可能性
この経験から一つだけニセクロナマコの利用方法が思いつきました。
かなり特殊な条件ですが、仮に東日本大震災のような災害が起きて、
衣食住がすべて失われたとします。
日本全体が混乱していて、自衛隊もすぐに救助に来てくれそうにありません。
これから、あなたは数日間から一週間、もしくはそれ以上、一人で生き抜かなくてはいけません。
こんな時、あなたの目の前には津波で流されてきた、ドクサバフグとニセクロナマコと、どこかの
家庭から流れてきた大量の塩が打ち上げられていました。
そして、その隣には津波にも耐えきったニュキニョキと生えるキョウチクトウ。
ドクサバフグ
ニセクロナマコ
大量の塩
キョウチクトウ
あなたは丸一日何も食べておらず空腹です。
周りは瓦礫の山で、上記の4つ以外食べれそうなものはありません。
ぱっと見、まともなのは塩とキョウチクトウです。
塩を舐めながら、キョウチクトウなる植物をたべていけばよいかもしれません。
が、キョウチクトウを選んだ時点であなたは終わりです。
キョウチクトウはものすごい毒植物として知られていて、たまに他人の庭とかで育てられているのをみるとぞっとします。
どれくらいの毒性かというと、キョウチクトウで作った箸で食事をするだけで、死に至るそうです。
また、以前、馬小屋の脇に生えていたキョウチクトウが馬小屋で火事があった時一緒に燃えて、
その煙を吸った馬が死んだという話も聞きました。
そして、ドクサバフグ。
外見そっくりなシロサバフグやクロサバフグがいますが、
この2種類は肉から肝まで食べられるのに対して、ドクサバフグは、
ドクの名に恥じず、皮も肉も肝も全身強毒です。可食部分が永遠のゼロです。
キョウチクトウと変わりません。
こいつらに囲まれてしまった自分の運の無さを恨みましょう。
ということで、ここはニセクロナマコ+塩一択です。
運よく流れてきた大量の食塩で揉んで、揉んで、揉んで揉みまくりましょう。
そこらへんの端材でナマコを割き、内臓を取りだし、塩でひたすら揉みます。
動画では4回塩もみし、数ミリの厚さに切った身を7切れ食べた時点で舌がスース―しだしました。
よって、あなたに基礎疾患がなければ、塩で少なくとも4回揉み洗いして、数ミリの厚さに切った
ニセクロナマコを一日7切れまでなら食べても死なない可能性があります!
(ドクサバフグとキョウチクトウは100%死にます)
ドクサバとキョウチクトウとニセクロナマコに囲まれた時は、迷わず
ニセクロナマコで行きましょう!
ちなみに、ニセクロナマコを食べ続け2,3日生き延びたとしても、
ナマコ類はもともと栄養価が低く、一週間ならともかく、
一カ月間ニセクロナマコで生き延びるのは非常に厳しいでしょう。
結論:
マックがやってたら迷わずマックに行きましょう。
ウケる!!!
文才もありますね(笑)
毒ナマコと判明した時にはほんと笑いごとじゃなかったです 笑